97号(1994年01月)13ページ
日本平の好記録・珍記録 〜 子育てばつぐんブラッザグェノン 〜
						 毎年1年間の繁殖動物をチェックしていると、必ず名前の出てくる動物があります。バーバリシープやニホンシカ等の草食動物が殆どですが、霊長目ではブラッザグェノンが代表格です。
 何しろ1頭のメスが、ここ15年間に13頭も生んでいるのです。1産1子ですから、殆どが年子なのです。
 日本平では、1975年からこのサルの飼育を開始し、1977年に、初めてブリーディングローンにより犬山のモンキーセンターからオスを借り受け、ペアとしました。そして1977年に、最初の繁殖に成功し、今日に至っているのです。
 さて、その状況を表にしてみましたが、新生児死亡は0、人工哺育もなく、全て自然哺育で、皆6ヶ月以上無事に育てあげています。自分の子のめんどうを見ないサルの多い日本平の中では、母親のかがみのようなメスなのです。
 ただ、育つには育つのですが、子の成長が少し遅いのが気になります。種の特窒ネのか、それともメス親の栄養的問題なのかはわかりませんが、近似種のダイアナモンキーの子に比べると成長は半分くらいであり、生後1年でもまだ、子供といった感じで、親と同じようになるのに4〜5年かかります。
 ところで、このブラッザ家族の中で不思議な事が1つあります。それは、子にメスが多く生まれ、その子が性的に成熟しているにもかかわらず、この群れの中で、子を生むのはいつもメス親だけなのです。父娘の間には、近親交配を防ぐ何かが作用しているのでしょうか。これらのメスの子は、他の動物園にもらわれていったりしていますが、はたして繁殖しているのでしょうか。調べてみたい気もします。
 考えてみるとこのメス親も約20才位と思われます。この出産記録がどれくらい続くのか楽しみです。
<ブラッザグェノン繁殖状況>
[No.]   [性別]    [生年月日]          [移動年月日] 
 1        ♀        1979.6.16             1981.8.27         転出
 2        ♀        1980.7.16             1983.5.4           死亡
 3        ♀        1981.5.13             1988.7.26         転出
 4        ♀        1982.5.3               1984.9.21           〃
 5        ♀        1983.5.25             1991.11.1           〃
 6        ♀        1985.5.13             1991.11.1           〃
 7        ♂        1985.5.13                                   飼育中
 8        ♀        1986.9.30             1988.5.3           死亡
 9        ♂        1988.5.3               1988.12.15        転出
10       ?        1989.4.15                                   飼育中
11       ♂        1990.8.23             1993.10.24         死亡
12       ?        1992.6.17                                   飼育中
13       ?        1993.9.1                                       〃
(三宅隆)					


