でっきぶらし(News Paper)

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282号(2025年06月)7ページ

個性あふれる毎日

動物病院には、様々な場所から様々な理由で、様々な動物が仲間入りしてきます。人懐っこい子や触られるのが好きな子、毎日会っているのに毎日初対面みたいな反応してくる子、などなど個性あふれる仲間たちのなかで、今回は2羽の鳥たちを紹介します。

まずは去年の10月にやってきたトビの「トモ」です。トモは動物園の外で弱っていたところを保護されて動物病院にやってきました。来たばかりの頃は立つ力がなく地面にペターっと座り込んでいましたが、今では両脚で止まり木にしっかり掴まってピンと立てるようになり、さらに飛んで部屋を移動できるようになりました。さて、トモが病院に来てから半年以上経ちましたが、やはり元々野生で暮らしていたためか、一向に人に慣れる気配がありません。とは言っても部屋に入ると攻撃してくる、とかではなく目が合うと「まずい…人間だ…!」という顔をしながら、時には地面にペタンと伏せて死んだふりをします。健康管理のために体重を測っているのですが、死んだふりでじっとしてくれているおかげで、そのまま持ち上げて体重測定用の箱に入れることができます。とても助かります。実は私も去年の10月から動物病院で働き始めたのでトモとは実質同期になります。せっかく同期なので仲良くしてほしいところではありますが、半年以上顔を合わせているのに毎日新鮮な反応をしてくれるトモを見て、おもしろい子だなと思いながら日々お世話をしています。

そんなトモとは正反対の鳥が、今年の4月にやってきたオオバタンです。オオバタンは元々いた施設での愛称が「ピーチ」のため、病院ではピーちゃんと呼んでいます。ピーちゃんが病院にやってくる前にいただいた個体情報には、人間に対しての好き嫌いが激しい、よく喋る(ハロー、オハヨウなど)、人の肩や腕に乗るのが好き、噛むことがある、と書かれており、どんな子が来るのだろうと楽しみな反面、あの強そうなくちばしで噛まれたら絶対痛いだろうなと思っていました。いざ初めましての日、まだ新しい環境にも慣れていないだろうから、部屋の掃除はあまり時間をかけずにやって、スッと部屋を出ようと思いながら掃除をしていると、頭上の止まり木から「オハヨウ」と聞こえました。思わず顔を上げて「おはよう」と返し、感動したのを覚えています。次の日同じく掃除に入っていると、近くの網に掴まってこちらを見ており、腕に乗るのが好きと書いてあったのでもしかして乗りたいのかなと思い、噛みそうな仕草をしたらすぐ離れようと少し警戒しながら腕を近づけてみると、すんなりと腕に乗ってきてくれたのです。「お、乗ってくれた」と思ったのも束の間、肩へ移動し、顔まで近づいてきてほぼゼロ距離でこちらを見てきました。とにかく近い。「近いな…」と内心ドキドキしながら掃除を終わらせ、止まり木に帰ってもらいました。ひとまず嫌われていないようでよかったと安心しながら、前の施設で愛されていたんだなとほっこりしました。

人が怖いトビや人が好きなオオバタン、ほかにも個性的な動物がいっぱいの動物病院で、これからも楽しく働いていきたいなと思っています。

(田村)

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