でっきぶらし(News Paper)

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レッサーパンダ 「シュウナ」の お嫁入り

「シュウナ」は4月4日で満9ヶ月になります。現在の体重は6.62kgになりました。お父さんの体重は400g抜いてしまい、お母さんの体重にはあと200gに迫り、見た目は3頭の中で一番大きく見えます。

お客さんに「あれが、子供のシュウナであちらがお父さんで・・・」と説明すると「え〜〜、一番大きいのが子供?」とよく言われます。皆さんのおかげでシュウナは素直で元気な女の子に成長しました。

レッサーパンダの家は3部屋しかなく、次の繁殖を考えるとシュウナはよその動物園にお嫁に出さないといけません。メスのレッサーパンダはモテモテでお嫁さんにほしいという動物園はたくさんあるとのことでした。

日本平動物園は全国の「レッサーパンダの種別調整者」になっています。担当の獣医さんが全国の動物園のレッサーパンダの仲人役をやっています。そこで、シュウナの嫁入り先をいろいろ協議し、吟味してもらったところ大阪市の天王寺動物園に決定しました。
まだ、お嫁入りの日は決まっていませんが4月中には大阪に行く予定です。

さて、この9ヶ月間順調に成長してきたシュウナですが、誕生の時の話は「ZOOしずおか」に書きましたので今回はその後の成長記です。

シュウナは2006年7月4日に生まれ、生まれたときこそ大きな声で鳴いていたのですが2日目からは全く声を出さなくなり、しばらくの間生死の確認ができずに随分困りました。巣箱のフタを開けて覗いたりすると母親が育児放棄をするのではないかと心配し、じっと我慢の子でした。

はじめて子供を確認したのは生後約1ヶ月目のことでした。母親のナラが餌を食べている隙にそっと巣箱のフタを開け中の子供を確認しました。ナラはすぐに餌を食べるのを止めジッとこちらをにらみ「なにするのよ!」といった顔をして怒っていました。

その時子供は寝ていましたが生きていることを確認しすぐにフタを閉めナラに謝りました。これに懲りずその後は2〜3日おきに巣箱を覗いていましたが、ナラも少しずつ慣れて「しょうがないな〜」といった感じでこちらの覗き行為を容認するようになりました。

シュウナが巣箱から顔を見せるようになったのは約1ヵ月半後でした。巣箱の中が暑いのか、よく巣箱の入口にあごを乗せ寝ているかわいい姿が見られました。初めて自分から巣箱を出たのは生後約2ヵ月目でした。

シュウナのお兄さん「風太」とは大違いでした。風太は生後1ヶ月を過ぎたあたりから巣箱を出て、というよりか巣箱の中で動きすぎて転がり落ちたという方が当たっていました。そんなやんちゃな風太と比べるとシュウナは本当に慎重派で、顔も性格も父親似です。

巣箱を出て2日目のことでした。シュウナは巣箱の縁とか部屋の壁に沿って一歩一歩確かめるように歩いているのです。「まさか、目が見えないの?」と心配になり中に入ってシュウナの顔の前に手を差し出すとシュウナはビックリして立ち止まり、目が見えないのではなく慎重に慎重に歩いていただけでした。

そんな慎重派のシュウナも母親のナラの深い愛情に育まれすくすくと成長し、生後3ヶ月目の10月1日に一般公開を迎えることになりました。

さて、パンダといえば竹の笹を食べるのですが、生まれた子供がいつ頃から笹を食べると思いますか?私も非常に興味があったのですが、笹を始めて口にしたのは生後2ヶ月目でした。食べるというよりか笹で一人遊びをしていてたまたま笹が口に触ると噛み付いて遊んでいました。

本格的に食べるようになったのは2ヵ月半頃でした。離乳食にリンゴとバナナを与えていたのですが、食べたのは笹よりずっと後の3ヶ月を過ぎてからでした。

シュウナという名前が正式に決まったのは11月5日でした。2400通を超える応募があり父親の「シュウシュウ」と母親の「ナラ」の一部をとって「シュウナ」と命名しました。
実は名前を公募して応募のあった2400通のうち約半数は「フウカ」という名前でした。

あの有名な「風太」の妹だから「風」の字が入っていたのです。しかし、風太はすでに日本平にはいないので次に多く応募があった「シュウナ」に決まったのです。

順調に成長したシュウナを取り巻く状況に今、深刻な悩みがあります。それは子離れができない母親のナラです。ナラのシュウナに対する愛情は本当に言葉では表せないほど深く強いものです。見ていても頭が下がる思いでいっぱいです。

しかし、レッサーパンダの繁殖期は2月から3月です。それに基づいて計画を立てると、離乳も無事済み2月から親子別居をして今度はオスとの同居をしなくてはいけないのです。
以前からの計画通り親子の別居を2月1日から実行に移したところ、子供と分けられたナラはオスのシュウシュウには目もくれず、シュウナを探して右往左往し始めたのです。

はじめは仕方ないと我慢して見ていたのですが、日に日にその狼狽振りがひどくなり3日目頃にはパニック状態になり、シュウナの方も母親のあわてぶりがシュート越しに感じられたのか落ち着かなくなり、とても見ていられませんでした。

これ以上の別居は無理と判断し、仕方なく一緒にしたところナラはシュウナを強く抱きしめて舐めまわし授乳をしたのです。もう完全に餌を食べ離乳できていると思っていたのに驚きでした。それにしてもナラの子供に対する強い愛情をあらためて感じました。

3月も中旬になった今でも子離れできない状況が続いていますが、ナラ自身が納得行く子育てができるようにしてあげるほうが大事なように感じました。

4月にはシュウナは大阪の天王寺動物園にお嫁に行きます。風太が千葉で有名になったように、シュウナも大阪の人気者になることを祈っています。そして一日でも早くナラの孫が見られるように期待しています。
(鈴木 和明)

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