でっきぶらし(News Paper)

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134号(2000年03月)4ページ

マックの遊び相手

うちの動物園には現在2頭のアメリカバイソンが飼われています。オスの「マック」とメスの「モモ」です。モモの方は群馬サファリパークよりお嫁さんとしてやって来ましたが、マックは日本平動物園開園を記念しまして、静岡市の姉妹都市であるアメリカのオマハ市より寄贈されたペアの子孫にあたります。今回はマックのお話をしたいと思います。

 アメリカバイソンの放飼場にはご覧になられた方もいるかと思いますが、何やらごっついタイヤがドカーンとぶら下げられています。「あれは何だろうね?」「さて何だろう?」というお客様の会話をたまに耳にしますが、実はあのタイヤがイタズラ坊主のマック君の良き遊び相手となっているのです。あの大きなタイヤはトラック用のもので、自称そんなに非力ではない私が持ち上げようとしても1人ではなかなかち上がらない、それ程ガンコなものなのです。ところがこれがどうした事でしょう。マックがタイヤめがけて頭突きを一発おみまいするとあら不思議、「ドカーン」という音と共にタイヤは空高くすっ飛んでしまうのです。あの迫力は間近で見た人でないと分かりづらいかと思われますが、私にしてみればあのタイヤの重さがどれ程のものなのか身をもって感じておりますので、マックの「ばかぢから」には全くもってあっけにとられてしまいます。

 アメリカバイソンには、その昔人間がアメリカ開拓にともない残忍な殺戮を繰り返した結果、あわや絶滅にまで追い込んでしまったという、我々人類にとって大変考えさせられる過去があります。そんな中、かつてアメリカ大陸を勇壮に駆け回っていた迫力ある姿は、保護区内で養われた生活を送っている現在のアメリカバイソンには失われてしまったという事ですが、マックのあの頭突きを間近で見ていると、何か昔のアメリカの大自然の雄大さをほんの一瞬でもここに感じられずにはいられません。

 ただ担当の私にしてみれば、そういった感慨にふけっている以上に「ああやめてくれ〜」「その辺で勘弁してくれ〜」と思わずにいられません。何でかって?もう3回程タイヤにつるしてあるパイプをことごとく折られてしまっているのです。
 そして今日もマックは遊びに夢中です。              (松永 亨持)

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