でっきぶらし(News Paper)

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272号(2023年06月)5ページ

レッサーパンダのこどもの名前

2021年8月4日に生まれたレッサーパンダの名前はお客様からの募集ではなく、園が用意した名前からお客様に選んでいただきました。名前の候補がかなり方向性の異なるものだからなのか、とある日のTwitterトレンドベスト10の中に入っていたそうです。またその線で名前についてのテレビ取材も受けました。そこで今回は、それなりに真剣であったことを知ってもらうためにも名付けの話をします。

 名前は一生ものです。候補を考えるにあたり、私だけで良い名前候補を考えだす自信はありませんでした。そこで、園職員全員から名前の候補を募集しました。場合によっては、この段階でお客様から募集することもありますが、今回は園内職員が考えた候補だけを採用しました。一通り候補が揃ったら、今度は広報の担当者たちとの話し合いでさらに絞っていきます。話し合いの末に『アロン』『ツナ』『スマイル』『まくら』『かずのこ』の5つに絞られました。

1つ目の『アロン』は東京オリンピック2020柔道金メダリストのウルフ・アロン選手が名前の由来です。実は「候補の中にその年の金メダリストの名前を入れたい」というのは私の強い希望でした。というのも父親の和(カズ)の名前の由来が生まれ年に起因するものだったので、カズと同じくその年にちなんだ名前も候補に入れたかったのです。もちろん勝手に使ってはまずいので、所属事務所に連絡をとり、使用許可までいただきました。ここだけの話、私はスポーツに疎いので選手自体は他の職員にオススメしてもらいました。が、調べたらカッコ良すぎて、かわいらしいレッサーパンダのイメージとの乖離(かいり)が激しかったのか、選ばれませんでした。しかし金メダリストにも名付けを協力してもらえたことは、赤ちゃんを応援してもらえたような気持ちになり、嬉しかったです。

 さて、中には由来に強い意味が込められた名前もあります。2つ目の『ツナ』です。これまでに日本平動物園で生まれたレッサーパンダには静岡市の景勝地『三保松原』から『ミホ』や『まつば』、駿河区のヤマトタケルノミコトから『ヤマト』、清水区が舞台のマンガ『ちびまる子ちゃん』から『まるこ』という名がつけられました。同じく静岡の良いところを知ってもらう名前として『ツナ』を入れました。静岡市はマグロのツナ缶生産量日本一、シェアは9割越えです(2021年当時)。しかも二文字で呼びやすいので、個人的には本命でした。しかし、こちらも選ばれませんでした。お手頃なものから高級なものまで様々なものがあるツナ缶。静岡市にお越しの際は美味しいツナ缶探しもおすすめです。

 3つ目の『スマイル』には母親のニコと同じで、皆さんに笑顔になってほしいという気持ちが込められています。名前の由来もかわいらしく、音の響きも気に入っていました。しかし、投票期間中に外国人と思われる方の『これは名前じゃない』という声が聞こえてきました。国際視点で不自然でないかを考えるところまで頭が回っていなかったことは反省です(後から調べたところ、インドのネパールレッサーパンダのメスに『スマイル』という名前がついていたのでセーフ?)。他のレッサーパンダとの名前被りを防ぎたかったため、こちらの名前が選ばれなかったのは、残念なような良かったような複雑な気持ちです。

 4つ目はよく寝るという赤ちゃんの性格を反映させた名前で、かわいすぎずかっこよすぎずの『まくら』という候補も残りました。この名前は私の中で大穴だったのですが、開票時には2位とたくさんのお客様の支持を得ました。特に投票期間後半の追い上げが凄まじく、実際に赤ちゃんの様子を見て投票してくれた方が多かったようです。

 そしてみなさまに選んでいただいた『かずのこ』の由来は『和(かず)の仔(こ)』だから。同じ音で縁起の良い食材があるため、子孫繁栄の願いも込めています。実はこの名前、もともとはあだ名でした。名前がつくまでずっと『ニコの赤ちゃん』では長いので一時的なあだ名として心の中で『かずのこ』と呼んでいました。つまり、みなさまが選んでくださった名前は飼育担当者が考えたものでした。ご支持いただきありがとうございました(笑)。

最初に申し上げたとおり名前は一生ものです。選ばれた後、『かずのこ』という名前が本当にしっくりくるのかヒヤヒヤものでした。しかし名前が決まって1年以上が経ち、すっかり馴染んでくれました。『かずのこ』はかわいすぎずかっこよすぎず、色々な小ネタをばらまいてくれる、ちょっとおちゃめで親しみのあるレッサーパンダに成長しています。

中村 あゆみ

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