でっきぶらし(News Paper)

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270号(2023年02月)3ページ

動物園の餌事情

飼料担当です。その名の通り、動物たちの餌の管理を担っています。園内様々な種類の動物たちが色々な餌を食べるので肉、魚、野菜、果物、乾草(干し草)、ペレットなどなど飼料担当が扱う品も多岐にわたります。そしてその多岐にわたる品々が今年はほぼ全ての価格が高騰しています…。今年度から飼料担当に配属された私ですが、まだ右も左もわからないうちから「年度末まで餌代たりるのか!?」と問われ続け、他の飼育員に「○○は高いから可能ならなるべく別のものを使ってほしい。」と節制を呼びかけてきました。

そんな折ですが、この節制の呼びかけにより、実は喜んだ動物がいます。誰かわかりますか?……正解は『ライオン』です!正確にはライオンをはじめ猛獣たち(ライオン、ジャガー、ピューマ、ハイエナ)ですが、一番はライオンでしょう。というのもあらゆる品が価格高騰している中で、特に上がっているのが猛獣たちの主食となる馬肉です。輸入品は軒並み上がっていますが、特に馬肉は消費量も多いので痛手です。そこで、飼料担当は猛獣の担当者たちにお願いしました。
「できるだけ馬肉の代わりに鶏肉や鹿肉を使ってください」と。

「鶏肉はわかるけど、鹿肉って安いの?」と思われるかもしれませんが、実は鹿肉は馬肉よりはるかに安いのです。しかも県内で有害鳥獣として駆除されたシカ故に地産地消です。SDGsの流れにも乗り最高ですね、シカ。

栄養バランスの面もあるのでさすがに毎日鹿肉というわけにもいきませんが、週1で鹿肉を給餌してくれるようになりました。鹿肉が大好きな雄ライオンのギルは大喜びで骨付きの枝肉を咥えてブンブン振り回し喜びの舞をした後、骨まできれいに食べてしまいます。年のせいもあり採食に波がある雌ライオンのムールも鹿肉なら残さず食べるそうです。今までイベントなどでしかもらえなかった大好きな鹿肉を週1でもらえるようになって間違いなくライオンは得をしていますね。

ジャガー、ピューマはライオンほどわかりやすく大喜びはしないものの、メニューにバリエーションが増えたのはラッキーだったのではないでしょうか。ハイエナも大好物の骨にいつもは牛骨を使っていましたが、この度鹿骨が加わり、なんと2種類の骨を堪能できるようになりました。ウシより細いシカの骨はすぐ食べ終わってしまうようですが…。ちなみにトラは鹿肉がお好みではないそうです。意外ですね。

今年は「全国の動物園の餌代がヤバい!」とニュースや新聞で報道されたせいか野菜や果物の寄付を申し出てくださる方も多く、大変助かっています。時には与えられる動物がいないなどの理由でお断りせざるを得ないこともありますが、お気持ちは大変うれしく、動物園は愛されているなぁと感じます。まだまだ価格高騰はとどまるところを知らず、厳しい状態が続くと思います。これを機に新鮮で安価な地産品の利用を促進し、地域産業の力になれるような餌代の使い方ができたらもっと良い動物園になるかもしれませんね。しかし、それはそれとして今年度はなんとかやりくりを頑張ります。飼料担当でした。

(増田 知美)

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