でっきぶらし(News Paper)

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246号(2019年02月)4ページ

キリンのニューホープ、「ダイヤ」が来園

 昨年のクリスマスの事。
「山本さんは、今年のクリスマスは誰と過ごすんですか?」「いや~、ほんとは予定があって休みを取ろうと思ってたんですけど、新しいキリンが来るので、クリスマスも仕事なんですよ~」
本当は予定があるんですよ!あるんですけど、その日はキリンが来るから!キリンが来るから、仕事だから仕方ないよね!と、仕事を理由に今年もむなしい強がりをしつつも、ダイヤを万全の体制で迎え入れる準備を始めます。新しい暖房器具の設置OK!ふっかふかの床材も準備OK!そんなこんなしているうちに、あっという間にクリスマス当日に。
 午後2時くらいにダイヤを乗せたトラックが到着。園内をゆっくり周って、ダイヤにとっての新居となるキリン舎へ。ダイヤを乗せた箱はクレーンで持ち上げられ、ダイヤの部屋となる扉の前まで運ばれて行きます。キリンを運ぶ作業は大掛かりなため、他の飼育員達も応援に駆けつけてくれます。とてもありがたいことです。また大人数の共同作業ともなれば意見がなかなかまとまらず。「先に扉を開けてから馬栓棒(動物が箱から出てしまわないようにするカンヌキ)を外した方がいい」「いや、馬栓棒からだ」などああでもない、こうでもないと言い合うのは、動物を輸送する際のおなじみの光景であります。手順も決まって、ついに、輸送箱の扉が開かれる時が訪れます。今ここでダイヤが踏み出す、その一歩が、日本平動物園での新たなる生活の第一歩となるのです。が、その一歩を待てども待てども踏み出さないダイヤ。浜松市動物園で3か月間輸送箱に馴れる訓練を受けていたので、どうやら輸送箱の中にいるのが落ち着くようです。早く部屋に入って欲しいのに。さて、どうしたものか。キリンなら誰でも好きな椎の葉っぱを顔の前に近づけおびき寄せる作戦を実行へ。しかし一向に動く気配なし。それでも顔の前で葉っぱをゆらゆら揺らしているのが嫌になってきたのか、ちょっと後ずさりしたらお尻が後ろの壁にぶつかり、驚いた拍子に箱から飛び出てきたのです。葉っぱを食べたくて出てきた訳ではないけれど、結果オーライということで。
 浜松市動物園では母親のシウンと一緒の部屋で寝起きしていたダイヤ。日本平動物園の部屋では1頭で過ごします。初めてひとり部屋をもらった子供と同じですが、ダイヤには少し早かったのか、隣部屋にいるサクラに甘える素振りが見られます。
 ところで、動物園に新しい仲間を迎えたときに用意するものがあります。それは「個体紹介看板」。生年月日、どこの動物園で生まれ、体の特徴、性格、名前の由来・・・などなど。ダイヤも来園者の皆様に早く覚えてもらいたいので、さっそく製作に取り掛かります。看板に載せるためダイヤの顔の写真も撮って貼り付けます。出来上がった看板のダイヤの顔写真をよく見ると、なんだかぷくっと膨れて、ふてくされているように見えます。それはそうでしょう、大好きなお父さんお母さんと離れ離れになってしまったんですから。それでも早く日本平動物園の生活に慣れてもらいたいと願うばかりで、次回の個体紹介看板の写真には笑顔のダイヤを載せたいと思います。
(山本 幸介)

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