でっきぶらし(News Paper)

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239号(2017年12月)4ページ

病院だより「ピューマ 夫婦で入院→退院」

 236号でピューマの雌、エリザベスの入院について書きましたが、なんということでしょう。9月19日に、もう1頭のピューマ、雄のリンカーンまで入院してしまいました。
 餌の吐き戻しが多くなり、採食量、排泄量がどんどん少なくなって、ついには前に食べたものをほとんど吐き戻したきり、餌を食べない、フンも尿も出ない状態に。
 エリザベスと同じように吹き矢で麻酔をかけて捕獲し、病院に搬送しました。レントゲン写真を見てびっくり!お腹の中に砲弾のような形のフンがいくつも詰まっていました。極度の便秘だったのです。
 まずは、薬で排便を促す治療を試してみることに。消化管の動きをよくする薬や、人間がちょっとでもなめるとトイレから出られなくなるというウワサの下剤(日頃からお腹が弱い私にはまさに恐怖の薬!)を飲ませてみました。餌を食べないのにどうやってあげたのか?リンカーンはイヤな予感がするのか、獣医が近づくと口を開けて威嚇していました。そのシャーッと威嚇する瞬間に、注射器を水鉄砲代わりにして口の中に薬をピューッ!で、びっくりしてゴックン、です。そんな傍から見たらちょっと笑える攻防を数日続けてみましたが、残念ながらあまり効果はありませんでした。
 薬で出せないとなると、もう実力行使(?)です。リンカーンに麻酔をかけ、手術室でお尻の穴からカテーテルをぐいぐい入れ、これでもかと浣腸をしました。加えて、手で外側から腸内のフンをぐいぐい押して、これでもかと揉みほぐしました。初めは石のようにカチンコチンで、手で押してもびくともしませんでしたが、2度にわたる処置でついにフンが腸の中で崩れる手ごたえが。内視鏡をこれまたお尻の穴から入れて確認すると、砲弾だったのが散弾になっているのが見えました。
 そして次の朝、念願のお通じ!かなり硬いフンがボロッと出てきました。しかし、腸のマッサージ中に膀胱を傷つけてしまったのか、同時に大量の血尿が出て心配になりました。そのまた次の日、今度は一気に大フィーバー!同時に食欲も復活し、与えた肉をほぼ完食。心配していた血尿も徐々に正常に戻って、体調は急激に回復していきました。
 入院から1か月余り経った休園日、リンカーンは無事退院し、翌日の開園には元気な姿をお客様にお披露目できました。今も下剤は続けていますが、食べる方も出す方もとりあえずは快調です。
 そしてもう1頭の入院ピューマ、エリザベスも、ほぼ同時期に猛獣館に戻ってきています。腎臓の機能低下を飲み薬である程度抑えられそうだと判断して、退院させました。広い部屋で暮らすうちに、痛々しかった床ずれもかなりよくなってきました。
 大型のネコ科動物2頭が出て行った動物病院は、肉食動物特有の強烈なニオイから解放され、他の入院動物にとっては少し快適になったかもしれません。獣医も恐ろしく重いスクイーズ(注射や点滴のためケージの幅を狭くして動物を拘束する装置。2人でハンドルを回して壁を動かすが、シンクロ率が低いと動かない。詳しくは236号参照)のハンドルを回す作業から解放され、しばし筋肉痛と腰痛の養生を…できればいいなと思います。
(山田大輔)

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