でっきぶらし(News Paper)

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236号(2017年06月)2ページ

オランウータン館の厄介者

 オランウータン館が完成してから4年目に入りました。出来たばかりの放飼場は初め、土だけの状態でしたが、芝生の種を撒いたのと、外から雑草の種が飛んできたりして、年々、植物が増えていき、今ではとても良い感じになっています。面白いもので、ちゃんと植物同士もすみわけをしており、ジメジメした所には苔が生え、日当たりの良い所には背の高い草や木が育ち、日陰には背丈の低いオオバコやシダ植物が茂っています。見ていて「うまく棲み分けているな~」とついつい、感心してしまいます。植物が生える前までは、雨が降ると大きな水たまりが出来き、土が流れてしまっていましたが、今では、大雨が降った後でも植物の根がしっかり働いてくれ、雨水がたまる事や、土が流れてしまうこともなく快適に獣舎を使うことができています。また獣舎周りに植えた植栽のヘデラも、どんどん成長し、気根を出しながらオランウータン館を覆い始め、こちらも同じように良い感じです。設計時に「オランウータンの小さな森を作る」というコンセプトの元、アイデアを出して建設したのですが、年々植物が成長し、「思った通りになってきたな~」と嬉しく思っています。

 しかし、そんな中、考えてもみなかったことが起きてしまいました。植物のある所に彼らあり、そう、天敵の「害虫です」。植物がまだそれほど、生えてない1年目の時には何もなかったのですが、2年目のある日、植物達に異変が起きました。葉が細い草は何もないのに、ツワブキや雑草のギシギシなど幅の広く肉厚の葉をもつ植物たちが日に日に虫に食われていき、最後には茎と根だけになってしまいました。害虫を探してもなかなか見つかりません。あきらめかけた時、オランウータンが残して落とした白菜の葉を拾ってみると、その下に大量の芋虫がいることに気が付きました。よく見てみると「ヨトウムシ」です。この虫は名前のとおり夜に活動し、昼間は土の中や地表に隠れているため見つけにくいのです。正体がわかり、草をかき分けて探してみると、大量のヨトウムシが見つかりました。それからは、格闘の毎日です。オランウータンがいるため農薬は使用したくないので、毎日ただひたすら探して捕まえていました。多分数千匹は処分したと思います。その努力が実ったのか、翌年には、ほとんど見かけることは無くなりました。「ああよかった」と思っていたのも束の間、また新たな刺客が現れます。

 それは、オランウータン館が出来て3年目の春の雨上がりの後、突然やって来ました。放飼場のコンクリート壁面に大量の茶色の物体がうごめいています。その正体は…なんと「ヤスデ」です。彼ら自体は悪い事をするわけではなく落ち葉や菌類を食べて土に戻す益虫なのですが、さすがに、ヤスデが壁一面にいるのは見た目がよくありませんし、オランウータンが食べてしまうのも好ましくありません。幸い彼らは雨の降った後にしか現れないのですが、数が尋常ではありません。多分数万匹はいます。しかし、農薬を使えない以上、ヨトウムシと同じくとにかく捕まえるしかないので、大量発生が終了する夏終わりまで頑張って採集しました。しかし、4年目の今年も現在、大量発生中です。さすがに疲れてきたので、誰かヤスデの数を減らすいい方法があれば教えて下さい。


(飼育係  岩田 雅也)

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