でっきぶらし(News Paper)

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235号(2017年04月)2ページ

トラがいる風景(猛獣館の一コマ)

 猛獣館の2階で展示している動物と言えばご存知ライオンとトラですが、飼育をしながら毎日接していると、思わず笑みがこぼれてしまうポーズをとったり、逆に勘弁して~と思ってしまう出来事があります。今日はそんなアムールトラのフジについて話したいと思います。


①(温泉に入りたいフジ)
 アムールトラを展示している放飼場の左側には、滝がながれこみ岩で囲まれたプールがありますが、初夏から秋にかけてそこはフジのお気に入りの場所になります。ざぶざぶとプールに入り、ガラスのそばに座って『フー!』と一息!そして瞳を静かに閉じて一休み、その姿はまるで温泉旅館の岩風呂でくつろぐお兄さんのようで、思わず頭の上にタオルを乗っけてあげたくなります。一回の入浴時間は数分ですが暑い日は何度か入ります。見れた方はその日一日ラッキーかも!

②(かくれんぼフジ)
 『トラがいないよ、どうしたのかな?』
猛獣館の2階でお客様がトラをさがすことがあります。そんな時フジがどこにいるかというと、放飼場の正面の上部に岩棚がありますが、そこは風通しがよく動物園全体が見渡せる特等席で、フジはその上で昼寝をしたり猛獣館の外を見ていたりします。フジにとってはお気に入りの場所ですが、2階のお客様からは耳の先か尾の先くらいしか見えなくなってしまいます。『すいません3階からご覧いただけます』その都度案内をしますが、『頼むからフジ、下に降りてきて~』と願ってしまいます。

③(俺のなわばりだ!フジ)
 歩いていたフジが急に立ち止まり、尾を持ち上げたら要注意です。直後に霧のようなおしっこが後方に勢いよく飛び散ります。自分のなわばりを示すマーキングをしているのですが、お客様を意識して敢えてガラスに掛けることがありますので、ほとんどのお客様が『おー!!』と声をあげておどろいてしまいます。くれぐれもご注意ください。

④(食後は一休みフジ)
 時刻は午後3時を10~20分程過ぎた頃でしょうか、そろそろ猛獣館の動物たちが順番に室内に戻りご飯を食べる時刻です。お腹をすかせてそわそわしていたフジも入舎する順番がやってきました。『今からトラが室内に帰ります、ご飯を食べる様子がご覧いただけますのでよろしければご覧下さい』。岩の上で日向ぼっこをしていたフジが、お客様を案内している飼育員に気付きました。早速階段を降り始めたフジですが、途中の岩陰で一旦周囲を確認することを怠りません、安全を確認した後に室内に入る通路に近付きます。飼育員が扉を開けると、室内展示室にフジが入ります。ガラス越しに見ることのできる室内にご飯が用意してあり、お客様の前で早速おいしそうに食べ始めます。食べている横でしばしガイドをさせて頂きます。『アムールトラは野生ではアムール地方、ロシアと中国の間くらいの寒い地域で生息しています。寒い場所に生息する動物は同じ種でも、特徴として体が大きくなることが知られています。ですからトラの中で一番体が大きいトラです』。
『赤いお肉が馬肉、白くて丸いのが鶏頭です、私たちが美味しい胸肉やモモ肉を食べた後の鳥さんの頭もカルシウムを取るのに良いのであげています、ただ、フジは馬肉は大好きですが鶏頭はあまり好きでありません、いつも馬肉を先に食べて、鶏頭は後で渋々食べます』。『お肉の量は馬肉が6.5キロ、鶏頭が1キロ、合わせて7.5キロのご飯を1日1食で食べます・・・・』
およそ10分程飼育員がガイドしている最中、フジは寝室で黙々と馬肉を食べています。ガイドが終了した頃には満足げに寝そべるフジと、翌朝までかけて食べる鶏頭が転々と残っています・・・。

 フジのいる風景想像できましたでしょうか?ぜひ会いに動物園まで来てくださいね。(入舎する時間は、動物の体調で中々入舎しない時もあり毎日変わります。入舎時間の掲示はしておりません、ご了承ください)。

(飼育係 河村 茂保)

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