でっきぶらし(News Paper)

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227号(2015年12月)4ページ

レッサー双子、出産秘話

 よちよちとお母さんの後をついて歩くレッサーパンダの赤ちゃん達の姿を皆さんはもうご覧になりましたか?この2頭はなかなか巣箱から出てくれない、出ていても見えない場所に隠れていることが多いのでまだ見られていない方も多いかと思います。この号が発行される頃にはもう少し皆さんの前に出るようになっていると期待しています。
 さて、この双子ちゃんはシーとタクの第3、4子になります。シーの子育ては3年目、もうすっかりベテランのお母さんです。しかしながら担当の飼育員、つまり私は飼育員1年目、当然レッサーパンダの飼育も初めてです。レッサーパンダの赤ちゃんが見たい!出産を心待ちにしながら毎日シーの様子を寝室と巣箱に取り付けたカメラで観察していました。
 そして7月29日。私は小学生対象のサマースクール、その先生見習いとして参加する予定でした。朝いつもどおりカメラの映像を見ると、おや?シーの様子がおかしい。いつもなら朝ごはんをちょうだいちょうだいと部屋の中をうろうろしているのに、その日は巣箱に篭っていました。巣箱の中も明らかに巣材が増えています。これはもしかしてと思い、すぐさまレッサーパンダを長年担当してきた先輩飼育員に連絡をしました。するとやはり出産兆候の可能性が高いということでした。なので朝ごはんをあげて掃除は最小限に、放飼場にも出さず、静かに見守ることにしました。そしてシーは巣箱に篭ったまま、私は先輩に後をお願いしてサマースクールに参加しました。
 サマースクール中、アジアゾウを目指して子供たちと歩いていた時、「緊急で連絡をとりたい」と先輩から無線が入りました。とはいえ子供たちを放っておくわけにもいかないし、どうしたものかと困っているとバイソン担当の飼育員さんがバイソン舎から颯爽と出てきて「子供たちは見てるから電話使いな」と助けてくれたのです。そうして先輩と連絡を取った結果、やはり「赤ちゃんが生まれた」とのことでした。私はやむなくサマースクールを抜けることになったわけですが、抜けます!とだけ言って抜けられるわけがないのです。さあ困った、どうしようと思考をめぐらせていると、無線を聞いて状況を察したサマースクール先生役の飼育員さんや獣医さん、他たくさんの方々がフォローしてくださり、私は無事、シーと赤ちゃんの元へ駆けつける事ができたのです。皆さん本当にありがとうございました。
 こんな具合で生まれた瞬間から騒ぎを起こしてくれた双子ちゃんはその後もいろいろやらかしながらすくすくと成長しています。むしろすくすく成長しすぎてお母さんがバテバテという事態が発生したくらい。シーも双子、男の子の子育ては初めてなので手を焼いている様子です。双子の大きい方はよくお母さんや兄弟に飛び掛ったり、捕まえようとしたりとやんちゃしています。その割には臆病で飼育員が少し近づくと威嚇して飛びかかってきます。一方小さい方は飼育員にもほとんど警戒せず、すぐ目の前で掃除をしていても爆睡しているという先輩飼育員も驚きの肝の据わりよう。性格も大きさもまったく違う2頭がこれからどんな風に成長していくのか楽しみですね。皆さんもぜひ、楽しみに見守ってあげてください。

※12月17日にレッサーパンダの赤ちゃんの弟「タケル」が死亡しました。タケルは発育が遅れており、飼育員、獣医共に心配していました。兄のヤマトにはタケルの分まで元気に育ってくれることを願っています。

飼育係 増田 知美

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