でっきぶらし(News Paper)

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218号(2014年06月)5ページ

実習だより

 私は9月25日から27日の3日間インターンシップとして飼育実習をさせていただきました。ライオン、トラ、ジャガー、ピューマ、ミーアキャット、シロフクロウ、ホッキョクグマ、ゴマフアザラシとブチハイエナ、オオアリクイのお世話をさせていただきました。私は今回のインターンシップを知った瞬間、受け入れをお願いしようと決めていました。私は大学の工学部に通っていて、機械工学を専攻しています。動物の勉強をしているわけではないのですが、小さい頃から動物がとても好きで、大学生になってからも日本平動物園は何度も来園していました。また正直、工学系の職業にあまり興味がもてていないこともありました。そのため、とても好きな動物園で動物のいろいろな姿や、飼育の大変さや苦労などを知り、自分の研究や就職の参考になれば、と考えていました。
 今回の実習では、飼育のことや園内のこと、お客様のことなど、いろいろなことを教えていただきました。動物はかわいいけれどペットではないので、動物との距離感が大切ということ。フクロウなどの警戒心が強い動物の掃除は回る順番を決めて距離を保てるよう逃げ場を作っていること。ストレスなく健康観察をできるようにするためにアザラシやアリクイに行っている条件付けが本当に重要であること。餌の内容や、他の園から来た動物に与える餌の難しさ。人が中で騒いだらそれに興奮して入舎する動物がいれば、逆に警戒心が強く匂いが違うだけで入舎しない動物がいること。動物の体調の変化などで展示ができなくなったときに、代わりに展示するための動物が裏で飼育されていること。必要な道具は自分で作ってしまうこと。普段の飼育の仕事だけで忙しいのに空いた時間に、掲示する看板を製作したり、全国の動物園と情報交換をしているということ。近年の飼育員は飼育だけでなく接客としてお客様にみせ、楽しんでもらうという役割も大きくなっていることなど、そのどれもがこれまで考えなかったことや知らなかったことで、とても驚くことが多くあり、動物園での仕事という範疇を越えて、どんな仕事においても重要なことをたくさん学びました。飼育員の仕事は本当に幅が広く、他の仕事も凝り固まったイメージで考えてはいけないと感じました。
 工場などではなく、動物園でインターンシップをさせていただいたことで、私の学んでいる工学の技術は想像以上にいろいろな場所で活かせると実感できたのが、就職に迷っている自分にとってとくに大きかったと思います。3日間、飼育において苦労しているところで、工学の技術や研究が役立てられるところがないかということも考えながら実習をさせていただいていました。空調や柵だけではなく、トラやホッキョクグマのプールやアザラシの水槽の濾過機や放飼場の動物の爪によるガラスの傷の防止や水道の水圧の調整など、園内のいろいろなところに機械工学の技術が使われていて、さらに利用できるのではないかと感じました。とくに、私の大学で腕時計のガラスの傷防止のコーティングの研究もしているため、展示室のガラスが傷だらけになって観察しにくくなることが防げるのではないかと思いました。その爪跡も飼育員さんの「動物が爪でひっかいた跡です」という看板によって、また違った面から動物を知ることができる一つの展示になっていたので、すべて綺麗にしてしまえばいいというわけでもないこともわかりました。けれど、自分の専攻している学問の技術は本当に様々なことに活かせると感じました。また、機械工学科出身の管理事務所の方とお話もでき、より自分の専門と就職についてプラスに考えられるようになりました。
 たくさんのことを学んだ中でも印象に残っているのが、飼育員さんが小学生のインタビューに答えていた、「動物が大好きだからどんなに大変なことも忘れられる、辛いと感じることはほとんどない」という言葉です。最初は、飼育の大変さや辛さを知れたら、と思っていましたが、実際に自分が実習をすると本当に辛いことはありませんでした。飼育員の仕事の一部しかしていないのだから当たり前かもしれないけれど、辛さを感じないというのはとても理解できました。楽しんで仕事をしている自分が少しイメージできるようになり、難しいけれど、好きな仕事をしたい、仕事を楽しめるようになれたら、と強く思いました。
 今回の飼育実習で、今まで以上に動物が好きになり、また飼育員の苦労を知り、自分の将来の道がとても大きく広がりました。仕事を楽しめる人間になれるように、幅広く勉強をしていきたいと思います。とても楽しく実習をさせていただき、書ききれないほどのことを学ばせてもらえたのも、飼育員の方々や事務所の方々のおかげだと思っています。動物学を専攻していないことで、直前までかなり不安だったのですが、やさしく楽しく教えていただけてとても嬉しかったです。毎日が楽しみで仕方ない3日間になりました。お忙しい中、本当にありがとうございました

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