でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 217号の4ページへ217号の6ページへ »

217号(2014年04月)5ページ

≪病院だより≫くつしたブーム到来?

 「ヤマモ~トく~ん!」「ヤマモト君はどれ?」ふれあい動物園のプレーリードッグのガラス展示の前から子供たちの声が聞こえてきます。
 「ここだよ~」と、お客さんからは見えない裏の部屋で治療をしながら私たちが答えます。
 プレーリードッグのヤマモト君は治療中。左のほほにできたコブの治療を続けています。おっとりのんびりした性格のため、コブにできた傷を仲間のメス3頭からペロペロなめられても気にしません。治療に専念するため、裏の部屋で隔離生活をすることになりました。傷の様子が良くなると、今度は自分でも傷をいじることを繰り返すためついには入院、そしてエリザベスカラー装着生活となりました。
 これまでもエリザベスカラーは動物によって、治療したい場所によって、様々な使い方を工夫してきました。犬や猫の基本の使い方通り、輪っかを首周りに一周するだけでなく、部分的に切り取ったり、胴に一周ワンピースにしてみたり。今回のヤマモト君は、エサが食べにくくならないよう、傷の部分だけカバーするように切り取ったカラーを装着しました。さらに、手足を器用に使うのでカラーを自分で外さないよう、いつもは前足にたすき掛けの包帯を巻き、カラーを固定します。これまで、この包帯で皮膚が擦れてしまうことが時々あり今回はこれを避ける方法を試したいと思い、あるものを使いました。
 そう、「くつした」です。6年前のでっきぶらし185号に「くつしたのチチカカ」という記事を書きました(バックナンバーはホームページで読めます)。オオアリクイのチチカカの足の傷にくつしたをはかせたお話です。その後、ありがたいことに小さなお子さんのくつしたの寄付をいただきました。それがまだ残っていたのです。
 はき口を5cmくらい切り取り、わっかに手を通す穴を切り取るだけ。これを着せて、カラーをこのくつしたウェアに固定します。くつしたを自分で脱がなければカラーも動きません。
 「うまくいくかわからないけど試させてね。」と試作はおしゃれなボーダーを着せてみました。手を通す穴の位置が少しずれましたが、ヤマモト君はカラーもくつしたもいじることなく生活してくれています。病院担当飼育員が、汚れたら着替えるために次のくつしたウェアを穴の位置を考えてすぐに準備してくれました。
 数日後、今度はスローロリスが足に傷を作って入院しました。麻酔をかけて、縫合して、傷の処置はすぐ終わりますが、この子も傷をいじるタイプ、これからが勝負。つまり、カラーが必要。というわけで、ヤマモト君用に準備しておいたくつしたウェアはスローロリスが着ることになりました。入院室のお隣同士、おそろいのボーダーです。お見舞いにやってくる担当者たちはみんな思わず吹き出します。
 ヤマモト君はその後、ピンクのお花柄、水色のバンビ柄とお色直しをしています。包帯の時のような擦れは今のところなし。くつした大活躍です。
 さて、でっきぶらし214号で「フレンチネイルのゴンちゃん」のお話をしました。蹄を伸ばすためにテープを貼っています。先日、削蹄に来園した先生と「なかなか伸びないね。テープ以外の方法も試そうか。」と話し合って出た案が「くつした」でした。「でも、小さな子供用のくつしたなんてないよね・・」「いえ、あります!」と、翌日からゴンちゃんもくつしたをはくことになりました。プレーリードッグのヤマモト君、スローロリス、ロバのゴンちゃん。園内にくつしたブーム到来です。いえいえ、こんなブームは早く去って治療のいらない生活に戻れるように頑張らなくてはなりません。くつしたをはいているゴンちゃんにはみなさんが来園した時に会うことができます。その時は、入院室にいるヤマモト君とスローロリスのことも思い出して、早く退院できるよう応援してくださいね。

動物病院係 長倉 綾子

« 217号の4ページへ217号の6ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ