でっきぶらし(News Paper)

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215号(2013年12月)6ページ

≪病院だより≫シーとミウの物語 No2

 シーは産室を出産用に準備すると、巣箱に巣の材料を運ぶようになり、少しずつお腹が大きくなってきたように感じるようになりました。人工保育で育ったメスのレッサーパンダの中で、繁殖し、自分で子供を育てたのは国内で今迄に2頭だけでした。初産でもあり、4月からの新しい施設でもあり、担当者ともども不安でしたが、7月9日の朝、巣箱から赤ちゃんの泣き声が聞こえました。あとはシーに任せるしかないと見守りました。生後10日にシーに産室から少しの間出て貰い、赤ちゃんの性別の確認をして、メスと分かりました。その途中で大きな声で泣き出して、シーが外で「そわそわ」しだしたので、急いで巣箱に戻しました。その後、何か落ち着かないのか、巣箱から子どもを口にくわえて、ウロウロすることが何回かあり、その都度、どうするか考えましたが、シーに任せることにしました。そして、現在まで無事に育ててくれています。
 一方、広島に行ったミウは長いお見合いの末、秋にお婿さんと一緒に展示されました。お婿さんは一歳年下です。ミウもお母さんになって、「シーとミウの物語」が続いていって欲しいと思っています。
 当園では、日本国内のレッサーパンダの血統登録を行っています。これは簡単に言うと、戸籍簿を作って、日本で飼育されているレッサーパンダ全体を一つの群として見て、好ましいペアを作ることです。ただ闇雲にオスとメスを一緒にしても、その群れは破綻してしまうので、色々なことを考えながらペアは作られています。今回の様な「物語」は日本全国で存在しているのです。
 血統登録はレッサーパンダだけでなく、多くの希少動物でも行われていて、当園ではオオアリクイも担当しています。なぜこのようなことを動物園でやっているのかと言うと、人の手による生息地の環境破壊で、希少野生動物はますます減少しています。その少ない野生動物を動物園に捕まえてくるわけにはいきません。動物園が野生動物を飼育し続けるためには、自分達で、今飼育している動物の世代を重ねてゆかなければならず、日本全国、または世界で協力しなければならない時代になってきています。また動物種によっては動物園で増えた動物を野生復帰させる試みも出てきています。
 このような取り組みが今後も継続されて、少しでも長く、先の世代まで、動物園で動物たちに会えるように、動物園の職員は努力しなければならないと思っています。

動物病院担当 金澤 裕二

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