でっきぶらし(News Paper)

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206号(2012年06月)4ページ

≪実習だより≫

 9月12日から18日までの一週間、園の病院にて実習させていただきました。自分が一番興味を持っているにもかかわらず、学校の授業ではほとんど触れることのない野生動物や動物園動物を間近で見たい、と思い実習をお願いしました。
実習内容は朝夕の園内巡回、病院に収容されている動物のご飯の準備や掃除、死んだ動物の解剖などでした。
 園内巡回時には老齢で、なかなか火傷の治らないオオアリクイの治療や、やはり老齢で結膜炎と床ずれを患っているツチブタの治療、乾燥に弱いバクの足を保湿するための油塗りなどを見学させていただきました。巡回は毎日行われており、動物たちは獣医の方の顔を覚えているようで、寄って来たりあるいは「こいつは痛いことをする奴だ!」と警戒したり、逃げたりと動物園のお客さんに見せる反応とは明らかに異なる反応を示したのが興味深かったです。獣医師の方も動物の顔をほとんど覚えているようで、同じスペースに複数の個体が入っていても一頭ずつ名前を呼んで声を掛けていたのはとても印象的でした。私も写真と見比べてどの子がどの子なのか覚えようとしましたが、ほんの一週間やそこらではできることではありませんでした。特に猿の仲間は、これといった模様の違いがあるわけではないのであまり見分けがつきませんでした。
 巡回中、獣医師の方は動物を直接見るばかりではなく、飼育員の方に必ず声を掛け動物の様子を聞いていました。飼育員の方と密にコミュニケーションを取ることは、動物の「普通」の状態をよく知ることができるとともに、少しでも異常が生じた際いち早く察知できるのでとても重要であると感じました。また、一日に一度、飼育員と獣医師が全員出席するミーティングが行われており、飼育員の方が自分の担当ではない動物のことまでよく知っていることに驚きました。飼育員だから担当の動物の世話しかしない、獣医だから動物の治療しかしないという隔たった関係ではなく、動物園として一丸となって動物たちの生活をより良いものにしていこうと日々努力なさっているのだな、と思いました。
 実習期間中で一番印象に残ったのは保護鳥獣としてやってきたヒメアマツバメを放鳥したことです。眩しいくらいの青空のもと、目下に広がる一面の茶畑の上を滑るように飛んで行ったツバメの姿は感動的でした。元気に長生きしてほしい、切にそう思いました。
 今回の実習で一番得たことは、「自分がいかに知らないか」と言うことを知ったことでした。今まで獣医学を学んできて動物園動物はほぼ授業に出てきませんでしたし、野生動物も治療と言う点に関しては学んでいないに等しい。恥ずかしいことですが、授業で触れられてもいなかったので、獣医師が診察するのは人間以外のすべての動物であると漠然と知りながら、動物園動物や野生動物についてほとんど学んでいないことに疑問すら持っていなかったのです。授業を聴くだけで学べることは本当に一部の知識なのだ、と痛感しました。これからはもっと広い視野を持つためにも授業以外で学ぶ場を見つけよう、と思いました。
 最後に、お忙しい中実習のお世話をしてくださった獣医師の皆様、病院の飼育員の皆様、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

岐阜大学 5年 馬場みなみ

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