でっきぶらし(News Paper)

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181号(2008年04月)6ページ

いい日〜旅立ち

もうすぐ春ですねぇ〜♪恋をしてみませんか!?

野生の世界でも恋から出産の季節。しかし、せっかく育んだ子供が保護されてくる。12月初旬にまだ目の開かないハクビシンの赤ちゃんが動物園の動物病院に保護されてきた。体重は100gにも満たないが元気そう!ハクビシンというと俗に害獣と呼ばれるが、とても可愛らしいタヌキのような顔立ち。保護してくださった方の名前にちなんで、名前を「チャチャ」と名付ける。

〜第1段階、人工保育〜
 
1日5〜6回哺乳し、順調にチャチャは成長していく。1月下旬、離乳食に切り替えるが違和感なくバナナをペロペロ。ペロペロした時点で儲けもの!バナナ、リンゴ、煮イモ、ミルクに浸したパンをすりつぶし、ミックスして与えていく。「食べた!食べた!」さすがに離乳食に切り替えた時点から細かいながらも立派な糞だ。

このあたりから散歩も日課。職員駐車場奥の裏山での散歩。チャチャにとって飼育員は親。少しでも離れたら命取りなので必死についてくる。よちよち歩きだがチャチャなりにダッシュでついてくる。小さいながらに天敵(カラスや猛禽類)の存在を本能的に知っているようだ。でも、さすがに子供。私も急いで走るとチャチャは飼育員を見失う。10m離れた所で鳴きながら飼育員を探すが、気が付かないので横の草を手で払い、小さな音「サッサッサッ」、程度の音を立てた瞬間・・・・すっ飛んで来た。人間が聞こえない程の小さな音でわかるみたい。野生動物の聴覚に改めて圧倒されてしまう瞬間。生き抜くために身につけた本能なのだろう。

〜第2段階、お見合い〜

チャチャの後に保護された、チャチャより一回り大きく、目が開いている状態で来た3兄妹のハクビシンとのお見合い。まず、ケージ越しでのお見合いだが、お互いに興味津々。直感だがうまくいくはず・・・・。同じケージ内に入れてみると、期待を裏切ることなく仲良くやっている。お見合い成功。これで4兄妹!?果物、野菜、ドッグフードを争うように食べる。生きるための争い。いや、観察してみると威嚇はしていない。「兄弟愛なのか?よしよし順調に?ん?」。

〜第3段階、野生復帰〜

順調に行けば行くほど、一日一日が過ぎれば必ずともチャチャ、3兄妹とのお別れがくる。成長すればもちろんの事。しかし、食べ物が豊富?いや、まだ、冬よりもましな春に放獣してあげたいし。山へ帰す・・・飼育員にとってこれほど嬉しい事はないが、これほど寂しい事もなく複雑な心境。1つは食べていけるか心配だが・・・。「は〜、春なんだなぁ〜」。

今、人間の世界では暫定税率の話で持ちきり。道路、道路の話。「野生動物たちにも専用道路を作ってくれないかなぁ〜。ん?」。税金を払ってないかって?いや、山・森は道路を作るために提供しているはず。立派な道路はいらない。

道の先には草原地。そこには人の作った作物じゃなく自然の果物、野菜が。カラオケ?いりません!動物同士で音楽会!マッサージチェアー?いらない。そんな素晴らしい森が出来ればストレスが無くなり動物たちも肩が凝らないでしょう。住みやすい場所さえあれば・・・、害獣と呼ばれる事も無いのに・・・。

春なのに、お別れですか!?♪春なのに、涙がこぼれます♪記念にください、お芋を一つ、青い空で食べま〜す。春なのに・・・春なのに・・・。ため息また一つ・・・。

(市川 雅一)

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