でっきぶらし(News Paper)

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166号(2005年07月)3ページ

新しい動物園でのデビュー

162号で3匹の子トラちゃん待望のデビューの話題を松永飼育係が紹介しました。6回目の出産でやっと母親らしく子育てができるようになったナナの元、3頭の子トラ「スルガ・アオイ・マリン」は順調に育ちました。3頭が遊ぶ姿はいつまで見ていても飽きることはなく、来園者はトラの運動場に釘付けでした。
また、ホームページを見て遠くから何回となく見にきてくれるファンもいました。

この夏、子供たちはお婿さん、お嫁さんとして、新しい動物園で暮らし始めました。彼らの成長の様子を振り返ってみたいと思います。3頭の子供の様子は個性的でした。母親にベッタリのオスの「スルガ」。ナナが走るとそれについて走り、ナナが横になって尾を振るとそれにじゃれたり。ナナもスルガをくわえたり押さえつけたりして遊んでいました。

「アオイ」と「マリン」はメス同士。走り回ったり木の枝を取りそれをくわえて引っ張りあったりして遊んでいました。来園者に名前を聞かれた時には、お母さんの近くにいるのはスルガ、2頭で遊んでいるのがアオイ、マリンですと説明しやすかった。

遊んで腹ペコの3頭は、夕方の入舎の時にはいちもくさんに部屋に駆け込み餌を食べ始めたものです。食べるのに一番強いのはやはりオスのスルガ。皆が食べられるように4カ所に分けて餌を置くのですが、他の個体が餌を食べようと近づくと吠えて威嚇していました。母親のナナは、子供たちが食べるのを横になって見ていました。

本当なら食べたくてしょうがなかったと思いますが、じっと待ち子供が遊び始めると残っている餌(馬肉・鶏頭)を食べるのです。その後、お腹が一杯になった3頭は、横になっているナナの背中に乗ったり尾にかみついたりして遊びました。

運動場での遊びも大胆になり、観覧通路と運動場を仕切っている堀の縁から今にも落下しそうなことが何度かありました。そこで、落下しても怪我のないように堀の中間に幅1,5メートルのネットを張りました。これが功を奏した機会が2度ありました。最初はアオイ。遊んでいるうちに縁にぶら下がる状態になったことが何度かありましたが、ついにある日いきおい余って落下してしまいました。

その2ヶ月後、今度はマリンが落下しました。しかし、2頭ともネットのおかげで怪我もなく、堀にある階段を自力で登ってきたので、救出することができました。
生後8ヶ月が過ぎ、そろそろ他園に行く話が決まり始めました。

アムールトラは希少種です。しかし、国内での繁殖がなかなかうまくいっていないので、「子供たちを是非うちの園に!」というオファーがいくつもの動物園から来ました。最初に、長野市茶臼山動物園にスルガが行くことになりました。このために、ナナと子供たちを分けることにしました。夕方の入舎の時に部屋を分けると、普段は餌をすぐに食べる子供たちが、ナナの部屋を気にして餌を残す程でした。

それから数日間はそのまま分けて飼育しましたが、母親がいない遊びは静かなものでした。その後、スルガの出園のために、アオイ・マリンとスルガを分けると、恐怖から今まで見たことのない鳴き声で吠えまくりました。ナナはその時運動場にいましたが、部屋を気にして落ちつかない様子でした。

スルガは麻酔をかけて輸送箱に収容しました。箱の横には、かわいがってもらえることを期待してスルガの名前と長野の皆さんよろしくという看板を張り、次の日の朝に保冷車(暑いので)でスルガは長野に出発しました。

ナナは、横の部屋で1頭少なくなった子供を心配そうにのぞいていました。2頭になった遊びは、3頭の激しい遊びからおとなしい遊びに変わりました。

その後、アオイが京都市動物園、マリンが豊橋動植物園に行くことになりました。2頭一緒に麻酔をかけて輸送箱に入れ、病院に一時収容後、翌日、アオイにも名前と京都の皆さんよろしくの看板を添えて、京都市動物園に保冷車で搬送しました。最後にマリンも無事出園。それぞれ新天地で元気に暮らしているようです。

ナナは3頭がいなくなった部屋を寂しそうにのぞき込んでいる日が続き、数日後オスのトシと同居しましたが、トシが近づくと威嚇し近くに寄せない状態が現在でも続いています。最近は少し仲が良くなりそうな気配もあるので、そのうちに仲むつまじい状態に戻れば、7回目の繁殖も期待できると思います。
(佐野一成)

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