でっきぶらし(News Paper)

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130号(1999年07月)6ページ

あらかると 「トラのメス来園」

 日本平動物園30周年記念動物として、福岡市動物園より生後9ヶ月のメスのアムールトラ(昨年9月26日生まれ)が寄贈されました。3週間の検疫を動物病院で行なったのですが、人馴れしない個体で、鉄格子越しに獣医に唸っていたそうです。
 検疫が終わり、トラ舎へ移動しようと作業を開始すると、おとなしく移動用の箱に入るどころか攻撃してくる始末で、仕方なく麻酔をかけて運びました。30分もして麻酔が醒め始めると、ここは何処だとばかりに、見ている私に金網越しに爪を出し攻撃をしてくる可愛げのないトラです。トラにしてみれば、親と一緒にいたのを離され、訳のわからない場所に来た不安と怒りが入り交じり、隣にいるオスのトシにまで怒りをぶつけるかのように唸り、威嚇していました。
 このようなことが毎日続き、私もムカムカしていました。トシも横で唸られウンザリしてイライラしてきたらしく、私に威嚇するようになりました。約1ヶ月間は、部屋と通路の間の出し入れと清掃作業に汗を流す、根比べの毎日でした。
 開園記念日の8月1日に運動場で展示をするため、出入りの練習をすることになりました。外は広々しているし、2、3日は入舎してこないだろうと思いながら出してみると、トラは見なれない風景に不安だったのか、数分で部屋の中に入ってきました。
 次の日から午前中はメスを運動場に出し、午後からはトシを出すことにしたのですが、メスは扉を開けてもすぐに入らないことが多く、トシの運動場での時間が少なくなってしまいました。狭い寝室での生活でストレスがたまり、トシの威嚇が多くなってくるのとは反対に、メスは運動場に出るようになってからは落ち着いてきたらしく、トシに鼻を鳴らす?拶行動ができるようになりました。
 そろそろ一緒にする前段階ということで、顔を間近に見ても攻撃しないか様子を見るため、通路で鉄格子越しの見合いを行ないました。予想に反して、関心を示すどころか2頭とも遠い場所に座ってしまい、見合いになりません。そこでトシを運動場に出し、シュートカウンターを20センチ位開けて、顔をつきあわせる状態にして様子を見ることにしたのですが、一瞬の間にメスがカウンターの下をくぐり抜けて外に出て、トシと一緒になってしまったのです。
 「まずい!」と思いカウンターを開けて入れようとしたのですが、入るどころかメスがトシに近づき鼻を鳴らすと、トシは逃げて行きました。再びメスが遊ぼうと近づくとトシが逃げ回るという行動が続き、最後にはトシが前肢でメスをはたこうとしている様子が見えました。
 「ヤバイ!」と思ってドキドキして見ていると、案の定メスはトシのひとはたきで飛ばされました。しかし、飛ばされたメスが腹を出して降参ですという態度を示すと、トシはそれ以上の攻撃はせず、何とか見合いは成功しました。
 翌日より2頭一緒に出すようになり、メスはトシにチョッカイをかけ、「遊んでよ」とせがみ、運動場を駆け回っています。同居から1ヶ月がたち、最近はトシがメスの背中に乗り交尾動作をするなど、オスとしての行動が見られるようになりました。
 この仲むつまじい関係が続けば、3年後くらいには可愛いトラの親子の姿が見られるかもしれません。ここではメスのトラと書いていますが、名前の募集を行ないましたので、これが出る頃には可愛い名前がついていることと思います。
(佐野一成)

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