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動物園を支える小さな名脇役 ― ミルワームとジャンボミルワーム
いよいよ夏本番、暑い毎日が続いていますが(原稿執筆は8月初旬です)皆様いかがお過ごしでしょうか。私はと言いますと、勤務中は冷房のない獣舎でヒーヒー言いながら働いている分、プライベートでは冷房をガンガン効かせた部屋から出ないで過ごしてしまうおじさん飼育員です。
ところで飼育員がお世話をする生き物というと、皆さんライオンやゾウ、キリンといった大型動物や霊長類、鳥類、爬虫類(いわゆる展示している動物)などを想像するかと思いますが、実はそれだけではありません。小さな虫のお世話もしているのです。
飼育動物たちの健康を支えるために日々さまざまな餌が用意されていますが、その中でも飼育現場で重要な役割を果たしているのが「ミルワーム」と「ジャンボミルワーム」です。一般の来園者の目に触れる機会は多くありませんが、これらの昆虫は多くの動物たちにとって欠かせない栄養源となっています。ミルワームはゴミムシダマシの仲間の幼虫で、細長い黄褐色の体をしています。一方、ジャンボミルワームは別種の幼虫で、ミルワームよりも大きく、太い体が特徴です。どちらも高タンパクで栄養価が高く、昆虫を食べる習性を持つ動物たちの餌として広く利用されています。
動物園でミルワーム・ジャンボミルワームが活躍する場面は実にさまざまです。例えば、小型のサル類や鳥類、爬虫類、両生類などは野生下でも昆虫を捕食しています。そのため飼育下でも、自然に近い食性を再現するためにミルワームが与えられます。自分の担当する夜行性館ではスンダスローロリス、ハリネズミ、キンカジュー等、熱帯鳥類館ではほぼすべての鳥類に給餌しています。昆虫食の割合が高い動物にとって、生きたミルワームは単なる栄養補給ではなく、狩りの本能を刺激する重要な存在です。
また、ミルワームは「環境エンリッチメント」にも活用されています。環境エンリッチメントとは、動物たちが本来持つ行動を引き出し、生活の質を向上させるための工夫のことです。飼育員はミルワームを落ち葉の中に隠したり、専用の給餌器に入れたりして、動物たちが自ら探して食べる状況を作ります。こうした取り組みによって、採食行動や探索行動が促され、退屈の軽減やストレスの緩和につながります。
一方、ジャンボミルワームは大型で動きが活発なため、より大きな動物たちへの給餌に適しています。大型のトカゲやカメレオン、肉食性の鳥類などでは、通常のミルワームでは物足りない場合があります。そんな時に活躍するのがジャンボミルワームです。大きく動き回るため動物の興味を引きやすく、採食意欲を高める効果も期待できます。
しかし、単純に「たくさん与えればよい」というわけではありません。ミルワーム類は高タンパクである一方、脂肪分も比較的多く含まれています。そのため、飼育員や獣医師は動物ごとの年齢や体調、運動量などを考慮しながら給餌量を調整しています。栄養バランスを保つため、果物や野菜、配合飼料などと組み合わせて与えることが一般的です。
当園では餌の安定供給やコスト削減の観点から、ミルワームとジャンボミルワームの自家繁殖に取り組んでいます。比較的省スペースで飼育でき、繁殖力も高いため、継続的な供給源として優れています。また、昆虫飼育を通じて生物多様性や循環型社会について学ぶ教育活動に活用されることもあります。
来園者の多くは、動物たちが餌を食べる姿に目を向けます。しかし、その裏側には動物の健康管理や行動の充実を支える細やかな工夫があります。ミルワームとジャンボミルワームは小さな存在ですが、動物園の飼育現場では重要な役割を担う「名脇役」といえるでしょう。動物たちが生き生きとした姿を見せてくれる背景には、こうした小さな昆虫たちの支えがあるのです。次に動物園を訪れた際には、展示されている動物だけでなく、その食事や飼育の工夫にもぜひ注目してみてください。そこには、動物福祉を支える飼育員たちの知恵と努力が詰まっています。
(河村)



